ディレクター・メッセージ

放課後ダイバーシティ・ダンス
ディレクター
武藤大祐

ひとまずパンデミックのことを脇におけば、ここしばらく日本はダンス・ブームに沸いています。中高生の部活とも連動したストリートダンス。毎年アップデートされる盆踊り。K-POPの文脈からは「カバーダンス」の概念が定着しました。特定のジャンルの流行ではなく、「ダンス」そのものの存在感が増しているのです。

しかし、そこでブームの中心はあくまでダンスを「習う」ことにあり、「作る」ことへの関心は低いと感じます。圧倒的な影響力を持つSNSの最大の役割はダンスの「拡散」、すなわちコピーです。また、創作の実験場である「コンテンポラリーダンス」が、このブームと入れ替わるかのように委縮していったのも象徴的です。

Tokyo Tokyo FESTIVALスペシャル13の一つとして実現した「放課後ダイバーシティ・ダンス」(以下ADD)は、子供たちにダンスの多様さをワークショップ形式で体験してもらおうという企画です。ダンスについて広い視野が得られる場のモデルを作れれば、ダンスを深く見つめ、やがては「習う」だけに飽き足らず「作る」ことにも興味を持つような子供の育成につながるのでは、と考えたわけです。

一種の種蒔き作業ですから継続性が鍵です。そこで、講師は地域で様々なダンスに関わる大人たちにお願いしました。大人たちの側に異文化間ネットワークが生まれれば、子供たちは自分の生活世界にあるリアルな文化多様性に絶えず触れることができます。こうした「回路」の構築を目指しました。身近な地域で実践してみたいと思って頂けたら、ぜひご連絡ください。お待ちしています。

末筆ながら、本プロジェクトの実現にお力添え頂いた全ての皆さまにお礼を申し上げます。とくに実施地域である港区、国立市、日の出町、および各実施拠点のスタッフの皆さま、そして講師を快くお引き受けくださった皆さまに、深く感謝いたします。

「放課後ダイバーシティ・ダンス」ディレクター

武藤大祐むとう だいすけ

ダンス批評家、群馬県立女子大学准教授(美学・舞踊学)、振付家